気がつくと道の真ん中に立っていた。ひどい道だ。雨のおかげで牛の糞と泥の区別もつかなくなってしまった。
周りを行き交う人々は僕になんか目もくれない。まるで「僕」という人間だけが別の次元に存在しているかのように、ただ無表情に目の前を通り過ぎる。 「本当に僕はここに存在しているのだろうか?」 白い霧に覆われた退廃的な雰囲気、 おそらくここは二年前に訪れたヒンドゥーの聖地バラナシ。 そこに時間軸は存在しない。 僕は「今」その空間にいることに対し、全く違和感を感じていない。 ここはそういう場所なのだ。 僕はただ歩く。再びこの街に来たのだ、という懐かしさはなかった。ここにいる自分は、つまりずっとここにいたのだ。あの頃からずっと。 何の感情もわき起こらぬまま、僕は自分の「意志」とは別の「何か」にゆり動かされ、その街を歩き続けた。 街はあの頃と違っていた。いや、正確に言えばある部分は一緒で、ある部分だけが違っていた。この世界は僕の記憶の断片から築きあげられた世界。 僕は立ち止まる。見たことのない風景。ここはどこだろう。 「君は道に迷った」 聞こえてくるのではない。多分これは自分の意識だろう。きっとそれが物語を創っている。 「僕は今どこにいるのだろう?」 そう思っている自分を知覚する。 右も左もわからぬまま、僕はただやみくもに歩いた。そこで僕は一人の少年と出会った。 続く。
by oto-no-ha
| 2005-05-12 02:26
| dialy
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